日別アーカイブ: 2018年1月10日

SS さぁ行こうか

20XX年、夏。

わたしは一人で作っていたロケットが、ついに完成した。



小学生のころ、図工の時間に作ったペットボトルロケットを、クラスメイト全員に笑われてから、はや80年。悔しくて、悔しくて。いつか見返してやろうと、毎日少しずつ、だが確実に前に進み、ようやくわたしは誰にも笑われない、宇宙船を完成した。

 

だが、わたしの周りにはもう、わたしを笑ったクラスメイトたちはいない。

それどころか、わたしのこのロケットを褒めるものはもう、この地球には存在しなかった。

 

「没頭していたら、いつのまにか一人になってたわい」

 

いい加減飯を食えと、ドアをガンガン鳴らす母の声がまるで昨日のように思い出される。

反発して、よく母と父と喧嘩したもんだ。

 

わたしはだれにも邪魔されない空間で作業がしたいと、その時すごく思った。

わたしは中学卒業と同時に、家を出て、生まれた街を離れた。

 

地下は快適だった。

まさに、わたしが理想といた場所だった。

わたしの理想の環境で、わたしがやりたい、大好きなことができる。

これほど幸せなことはない、と心のそこから思った。

 

クラスメイトに馬鹿にされた悔しさで始めたロケット作りも、この頃には大好きになっていた。

わたしはロケットを作るために生まれてきたのだと、強く実感した。

そう思うと、あのとき馬鹿にしたクラスメイトはわたしをこの道を示してくれたといえるだろう。

 

「名前は……なんじゃったかなぁ……」

 

明るく、元気で、目がぱっちり開いていて、きれいな黒髪で、あの子が何かやりたいって言えばみんな賛同して、ついていった。

ああ、そういえばわたしは、あの子についていかんかったな。

それが気に入らなかったのか、あの子はわたしのことをよくからかったり、ちょっかいを出してきた。

 

わたしがテストで悪い点を取ったら笑い、わたしが体育でヘマしたら笑い、わたしが歌を歌ったら笑い……ああ、わたしが何をしてもよく笑っていたなぁ。

 

 

「よく笑う、可憐で、可愛らしい子じゃった……」

 

彼女の容姿は鮮明に思い出される。

なのに、彼女の名前が思い出せん。

 

「だが、今さらじゃったな……。

ふふ、あの子の驚く顔がみたかったわい……。

すこし……いや、だいぶ遅くなってしまったのぉ」

 

わたしは作ったロケットやさしく撫でる。

中学卒業の日に、屋上に呼び出して宣言したことを思い出す。

 

”もう笑われないような、でっかいロケット、お前に見せる! そしてオレは――”

 

「わたしは、あのとき、何を言おうとしたのだろうなぁ……」

 

わたしはロケットのハッチを開け、中に乗り込む。

エンジンを起動し、発射の準備が整う。

 

「目的地は……そうじゃのう」

 

“じゃーそのロケットで、私を緑が沢山の自然溢れる星につれていきなさいよ”

 

わたしは、彼女が言った星にした。

あるかもわからない、彼女が思い描く理想の星。

 

「さて……発進じゃ、SORAKO号」

 

——わたしは、あの子の名前を思い出した。