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SS 「男は臭い!」

「男は臭い!」
そう男って臭いんです。
だから、毎日朝にシャンプー使って頭と耳の裏を洗ってます。
「男は臭い!」
そうなの、男って臭いの。
だから、毎日マスクをするか、ガムを噛んでいます。
「男は臭い!」
知ってる、男って臭いの。
だから、週1でサウナ行って、汚い汗を流します。
「男は臭い!」
だから、気をつける。
そうすれば、いつか「いい匂い」って言われます。
そしたらHappy、Happy!



〜あとがきっぽい何か〜

大好きなことを見つけることができると、未来にワクワクします!

私は大好きなことを見つけることができ、今はワクワクしながら小説を書いています。

もしよろしければ、こちらも是非。


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タイトル: Code;Witch ~天才魔女と天才プログラマ~
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【Twitter】

@Akahashi_Keiko

SS サクラの女神の祝福

本日は晴れ。絶好の花見日和。

テレビのお天気アナウンサーが笑顔で今日の天気を伝えていた。2018年になって4ヶ月目に突入間近のこの時期にサクラという花が咲き始める。スギ花粉の地獄を対抜いた私を祝福するかのように、パァっと咲いてくれる。

——うん、よい。

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SS 運、運、運!

「はぁ~」
 パソコンの画面に表示されている6個の数字をみて、私は深い溜息をはいた。今回で何度目になるかわからないため息。だが、確実にため息の大きさと長さが伸びていることは明確だ。
 毎週月曜日と木曜日は、宝くじ『ロト6』の結果発表の日。
 2億を夢見て胸を高鳴らす日でもあり、一番低い賞もとれないがっかりする日でもあるのだ。
 最近では、胸の高鳴りがなくなりつつあり、がっかりする日だけになりつつある。

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冬の楽園 〜炬燵と雪見だいふく〜



 

冬に楽園があるとすれば、ソレは家の中に現れるだろう。

楽園の名は『炬燵』。

入ったが最後、炬燵からでることは容易ではない。

外の凍るような寒さで身体が冷やされ、家に帰ると炬燵の精霊が、

「早くおいでよ〜」と手招きしているのが見えるのだ。

たいていの冒険者はこの誘いに乗ってしまう。乗ってしまって、足先から身体の芯までじんわり、ゆっくりと暖められる。

それがなんともきもちいことか。

いかなる地獄の苦行に耐える修行僧も、この炬燵の前には手も足もでない。瞬く間に修行をやめ、炬燵の住人になる。

それはそうだ、なんたって炬燵は地獄ではない、楽園なのだ。

苦しみに耐えれるものほど、楽園で受ける恩恵は大きい。

なんたって楽園なのだから。

だが中には楽園を恩恵を受けても、気を確かにもつ強者も中には存在する。

強者は程よく身体を癒やし、再び旅にで、また疲れを癒やしに炬燵へやってくる。

このようなことができるものはそうそういやしない。

ところがどっこい。

炬燵の精霊はそんな強者も、炬燵の住人にとなり、長く滞在してほしいと思っている。

だから、精霊はあれやこの手を使って強者を引き止める。

とくに定番がみかんだ!

こいつは疲れたときにはもってこいの品物だ。

なんたってあの甘酸っぱさが心だけじゃなく、身体の疲れを癒やすんだから、これのコンボは凄まじい威力を発揮する。

そして、炬燵のなかで食うみかんが美味いのなんのって!

どういうわけが炬燵に入ったときと、入っていないときで食べると味が全然違うんだから、驚きだ!

……なに? みかんを食べても耐え抜くヤツもいるって?

おいおい、そいつはどんな化物だよ。

そんなやつがこの世界にいたってのかい!

はは、さすがに炬燵の精霊も諦め……

 

おい、ちょっとまて……まさかあんなものをだそうってのか?

なんてこった精霊のやつ、『雪見だいふく』なんて出しやがった!

え? 冬にアイスはないだろうって?

ばっきゃろー!

おめーは食べたことがないから、そんなことがいえんだよ!

いいか!

身体の芯がじんわりと暖かくなっているところに、もちもちで冷たい雪見だいふくが身体の中に入ってみろ!

もう、なんていうか!

とにかくすげーぞ!

 

ああああ、ほら、さすがの強者も、これじゃぬけだせねーや。

事前調査

 



 

炎天下のなかよくやる。
いや、灼熱地獄と言ったほうがいいのかもしれない。
生き地獄とはまさにこのことだ。

熱い、臭い、暑い、臭い、厚い、臭い……。

遠くで見ているこちらまで臭ってきそうだ。
見ろ、なんか白い靄がたってるぞ。
なんというエネルギー。あそこにいる連中はきっと苦しく、辛く、絶望に支配されているのだろう。
かわいそうに……あの場にいない私はなんと幸運なことか……。

「どれ、苦しんでいる顔でも拝むとするか……」

酒の肴にでもなってもらおう。

「な……なんだと?」

私は双眼鏡であの場にいる奴らを顔みた。

見間違いか?

なんだあの希望に満ちた顔は。

なぜあんな顔ができる。

顔に『至福』、『幸せ』、『人生最高』、『幸せとはまさにこの事』と書かれている。

彼らは生き地獄にいるのではないのか?

あんな状況であんな顔をしている奴らはただの馬鹿。

もしくは……

「最強の戦士……」

もしかしたら私たちはとんでもないものに喧嘩を売っているのかもしれない。

上層部がこの司令を出した理由がわかった気がした。

私は無意識に身体を守るように腕を組んだ。

背中がじんわり熱い。

「こちら、拠点C地点……ただちに十傑を招集しろと上に報告しろ……。
ああ、そうだ。準備を怠るな……とも付け足せ」

さて……私も行くか。


帰り道の誘惑 〜明太チーズポテトまん〜

帰り道の誘惑 〜明太チーズポテトまん〜



 

ガチャっと重いドアを乱暴に引くと、開けた瞬間に身体を突き刺すような冷気が、中田 一郎の身体を襲う。顔が刺されたように縮こまる。
「さむぅ」
これで何度目だろうか。ここ最近はこのドアを開ける度に口にする。いい加減別、このセリフにも言い飽きた。他にも「寒い」という表現を……と思うのだが、これ以外に出てこない。
まったく、自分のボキャブラリーの少なさを呪いたくなる。
「……雨だ」
3日前から雨もしくは雪になるとパートのおばちゃんたちが言っていたのを、中田は思い出した。一緒に「いやーねー」と言ったことも思い出した。
それなのに、中田の手には傘がない。この前盗まれたからだ。
このまま歩いて10分ほどの駅まで歩くか……。
いや、そんなことしたら冷たさで身も心も冷凍されてしまう。
中田はちらっと横を見る。先程から視界に入っている『7』の文字が刻まれた看板のセブイレブン。看板の光や店内の光が、優しく手招きされているような気がしてならない。これが日本一のコンビニの力なのか。

「いらーしゃっせー」
(えっと……傘は……)
この天気だからなのか、でかでかと一本500円と書かれたダンボールの値札と一緒に、数十本のビニール傘がおいてあるのを、中田は入ってすぐに見つけた。
まるでこの店の看板商品かのような扱いだ。
ビニール傘はだいたいコンビニでは500円。
この500円がワンコインで買えるからお得なのか、たかがビニール傘に500円はボッタクリなのか、中田はよく脳内で度々会議が開かれるのだが、今回は満場一致で『ボッタクリ』と決まった。
(そもそも、盗まれていなかったら買わなくてよかったし……この500円でお菓子とか買えるのに……チョコとかチョコとか……)
中田は小銭を入れる小さい財布を、ワイシャツの胸ポケットから取り出し、小銭をチェックする。
(500円……あるね)
ザッとみて600円以上ある。
(余ったお金でお菓子……いやいや、だめだめ)
余計なものは変えない。昨月は使いすぎて、月末困ったばかりだ。店内を見渡せば甘い誘惑が盛りだくさん。気を抜くとつい買ってしまう。
中田は店内を回ることなく、一直線と会計を待つ列へ向かった。

「こちらのレジへどうぞ」
一つのレジで回していたが、ちょうどいいタイミングでもう一つのレジがあき、あまり待たずに中田の番となった。
ラッキーとそのレジへと向かう。だが、この行動によって中田はあるものが目に入ってしまう。
明太チーズポテトまん。ラスト一個。肉まんや、あんまんを入れる容器に入っていた。
中田はソレを目にした瞬間、先程まで微塵にも減ってなかったお腹がへり、口の中によだれがでてくる。
中田の明太チーズポテトまんに釘付けになった。
(うまそう……明太とチーズとポテトなんて最強に決まってる。食べたい。けどお金……まって、600円以上あったよね。あ、足りる。え、どうする? 買う? 買っちゃう? でもここで耐えたら夕飯がより美味しくいただける……けど、今日月初だからよくね?)
「すみません、あと明太チーズポテトまんもお願いします」
「はい、ありがとーございっしたー」

店をでて、中田はすぐにビニール袋から明太チーズポテトまんをとりだし、包まれていた紙を剥がす。
明太チーズポテトまんを見た瞬間から空腹がピークに達していたので我慢の限界だった。すぐに薄いピンク色の生地にかぶりついた。明太子の香りが鼻をつく。だが、まだメインの餡に到達しない。
つかさず、二口目。
今度はあっつあつの餡が口の中で広がる。そして、ビミョ〜んとチーズが口から伸びる。
ホフ、ホフ、ホフ。
白い湯気が口の中から蒸気機関車のように吹き出る。
(うんめ〜)
三口目。
今度は一口サイズのポテトが登場。口の中に転がる。これがまたホクホクとして美味い。なんだか体中が火照るのがわかる。
気がつくともう半分以上がない。
中田は中央から明太チーズポテトまんをちぎる。するとまた、ビミョーんとチーズが伸びる。チーズが切れて落ちないように片方の明太チーズポテトまんで掬い、そのまま口の中に入れる。
もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ。
もう片方も口に入れる。
もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ。
「ふぅ……ごちそうさん」
うまかった。だけど、もう少しチーズがあって、明太子の味が濃かったらさらに最高だった。
「ふぅ」
吐く息が白くハッキリみえる。
気がつくと定時後に来た仕事に激怒していた自分は遠い昔のように思えていた。
中田は買ったばかりの傘を広げ、これから雪となる雨の中に足を踏み入れた。





 

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やだけど笑え



「やだ、私はやりたいくない」
「でも、君以外にデキる人いなから……」
「やだ。嫌なものは嫌です。どうしてこんな大雪の日に私が行かないと駄目なんですか」
これのやり取りが始まって、かれこれ25分以上経過している。流石に周りも疎ましく思いはじめ、チラチラと経理部のおばちゃんがこちらをうっとしそうにみている。人事部の若い事務員は一人だけ興味深そうに見ている。
「だから! 君以外に行ける人間がいないって言ってるだろう! 何度いえばわかるんだ! さっさと言ってこい! このあふぉがああああ!」
怒鳴るや否や、腕を掴み無理やり外に出され、呆気にとられる。まさかあんな態度をするとは思わず、反抗する暇もなかった。
普段怒らない人が怒ると怖いんだな。
あの場にいた皆が同じことを思っただろう。
強風に吹かれる大粒の雪が頬に当たる。ビュービューと耳の中を刺激する。まともに目を開けてられない。目が凍ってしまう。
「無理……こんなの無理」
戻ろう。そしてやつに一言、いや千言言ってやる。手が出るかもしれないが、仕方ない。
だが、怒り虚しく扉を開くことができない。
「鍵かけるか? 普通」
どうやら今回はガチのようだった。戻ることができないのなら、進むしか無い。
「こんな大雪……ここは北極か南極か。
てことは、私はアザラシだな」
ペンギンでもいい。そしてらうつ伏せになってスーッと滑ってやる。
だが、そんなことはできない。一歩、一歩、ザクザクっと音を立てながら先へ進む。歩けば歩くほど、靴の中に雪が入る。もう冷たすぎて足先の感覚がない。
「肺が凍りそうだ……」
鼻水もたれる。そしてなんと鼻水が凍っているではないか。
昔、鼻水を凍らせて、凍らせた鼻水を鼻息で吹き矢の如く飛ばして攻撃してくる雪だるまの怪人を思い出した。
自分はまさしくそれだと思うと、笑いがこみ上げてくる。もしかしたら、出来るかもしれない。やらないが。
笑うと不思議と怒りが収まってくる。そして自分がまだまだ頑張れることがわかった。
笑えば行ける。余裕だ。
いろいろ想像した。氷漬けになるヤツ。雪崩に巻き込まれるヤツ。池に落ちて凍るヤツ。知らない人に服を全部盗まれて裸でブルブル言わせているヤツ。
なぜか全部ヤツのことを考えてしまう。
もしかしたらヤツのことが好きなのかもしれない。
そんなアホな。でも笑える。
そんなことを考える自分が笑える。笑いのエンドレス。
「笑うとなんかいいな」
気がつけば、目的地に到着。
意外とできる。笑ったからだ。笑わしてくれたヤツに感謝した。
「ただいま」
「あれ?! あんた仕事は?」
「辞めてきた!」

 

 




 

SS こっそりと

こっそりと



「花ちゃん、時間ある? もしあるなら、お礼にコーヒーおごるけど」
「……すみません、課長。このあとすぐに2階に呼ばれてるんです」
「あら、そうなの? 花ちゃん人気もの〜」
「あははは……」
「まぁ、実際、花ちゃんが入ってくれたおかげで、みんな助かってるからね。
みんな言ってるよ。花ちゃんのおかげ、仕事がスムーズにいくって」
「いやいや、そんな。私なんて……」
「本当だって。部長も言ってたよ。よくあんないい人材がこの会社来てくれたって。本当よかったって」
「本当ですか? ……それなら、嬉しいですね」
「ふふ、あ。引き止めてごめんなさいね。依頼、がんばってね」
「はい、ありがとうございます。課長」

ソールメイト株式会社は、電話営業を主軸とするコールセンターの会社である。従業員数2000人を超える、県内では5本の指にはいるほどの大きいコールセンターだ。
従業員のうち正社員は50人もおらず、その殆どが、パート・アルバイトの20代後半から70代前半までの女性で構成されている。
私、中谷 花は、今年10月(今から1ヶ月前に)に転職してきた、数少ない正社員の一人だ。
コールセンターの会社に入社したからといって、電話営業をやるわけではない。私が所属している部署はバックヤードで現場を支援する、管理部の一員だ。その部署のシステム課の社内システムエンジニアとして、パソコン関連のヘルプデスク業務や新システムの導入や、コールツールの改修などを主な仕事としている。
入社当日に人事から「中谷さん、営業でもできるよ。どう営業にいかない?」と言われたが、全力でお断りをした。
営業なんてやってられない。やりたくない。
なんのために前職の経験が活かせる職種を選んだと思ってるんだか。
私はもう前職のようなあんな仕事はしたくない。楽して、得意なことで食って行くんだ。そのためにここに入社したんだ。
「でも……正直、失敗したなぁ……」
楽な仕事と思って入社したが、全然楽ではない。
もちろん、前職に比べたら仕事はかなり楽だ。
楽だが、前職にはなかった辛さがここにはあった。

ソレが2つある。
7年以上在籍しているのにも、関わらず殆どの社員から信頼がない、私の先輩。面接したときは、「いい人だな」「前職の暴力野郎とうはわけが違うな」と思ったのだが、蓋を開けてみればとても仕事ができない人であった。
それはシステム部分の知識ではなく、仕事のススメ方だ。この人、2つ以上の仕事を効率よく捌くことができないのだ。2つ以上仕事があると、頭が混乱して、うまく調整が効かず、私に仕事を振ってくる。いや、振るのは構わない。振るのならちゃんと説明して振ってほしい。
もう一つは、この会社のパソコン知識が、めちゃくちゃないということ。それは正社員を含めてだ。
まさか「強制終了はどうやるのか」と聞かれたときは、冗談でいってるのではないかと思ったほどだ。
ネットが繋がらないと強めの口調で内線してきて、いざ確認してみるとネットケーブル(LANケーブル)が外れているだけとか。そもそも、ケーブルをつなげないとネット見れないことを知らなかった。
こんな細かい依頼(依頼といっていいのかわからないが)が、15分置きにくるのだから、私は管理部のある8階と現場の2階を行ったり来たりしているのだ。
自席を温める時間なんて皆無だった。
「お疲れ様です。どうしました?」
「ちょっと中谷さん。これ、なんか変なのがでてきたんだけど。毎回でるんだけど、これなんなの?」
「あ。それはセキュリティソフトの定期診断なので、放置しておいてくださいね」

ストレスを和らげる時間のお昼休憩の時間。私はふーっと一息ついてお弁当が入っているロッカーを開ける。すると、そこに自分が入れた覚えがない、お菓子が一つはいっていた。私はそれを見て、口角があがる。
入れた覚えはないが、誰がいれてくれたのか、私はわかっている。
「栄子さん、またこっそりいれてくれたんだ」
栄子さんは、2階で電話営業をやっているパートのオペレーターさんだ。たまたま帰る方向が一緒になり、そのとき話した趣味の話題で盛り上がり、それ以来仲良くしてくれている。
栄子さんが美味しいチョコを買ったからおすそ分けをしたいということになり、私のロッカーに入れといてほしいとお願いした。そのとき、栄子さんが
「なんだか悪いことしてないのに、悪いことしてるみたいでドキドキしてなんだかいい感じだったわ」
と嬉しそうに話していたので、それから私もお返しにこっそりと栄子さんのロッカーにお菓子を入れた。栄子さんが言ったようになんだかドキドキして、いい感じだった。
以来、不定期にこっそりとお菓子を渡し合う関係となった。
(それにしても、栄子さんはいつ入れてるのだろうか……)
基本、パートのオペレーターは指定された休憩時間外に休憩室に行くことを禁止されている。
(うまく抜け出せてるんだなぁ。営業成績がトップクラスなのだからかな?)
いや関係ない。
私は栄子さんがくれたイチゴのチョコレートを口にポイッと投げ込む。
すると口の中にほんのり甘酸っぱいイチゴの味が、いっぱいに広がった。

後日、私はこの間のチョコのお返しに、栄子さんへのロッカーに近づくチャンスを伺っていた。だが、なかなかそのチャンスが訪れない。
「もう、なんでよ! 金曜なのにこんなに依頼が多いのよ!」
私はエレベーターの中で一人、扉が閉じた瞬間に思いの丈を感情込めて言った。言い切ったあと、監視カメラと目があった。私は思いっきり睨みつけた。
「あと30分しかない。栄子さん今日12時までだから帰っちゃうよ……」
先程受けた依頼は、話の長い部長からだった。捕まったら最後、最低30分は拘束されてしまう。
そんなことになったら今日中に栄子さんに、お礼のお菓子を渡すことができない。そんなの嫌。今日渡したい。
私はエレベーターが移動中に、休憩室のある3階にいくため3のボタンを力込めて押した。
(さっと、最速で入れる!)
すぐに部長のところに行けば、問題ない。この時間なら誰も休憩室にはいないはず。
「よかった、電気消えてる」
私はポッケに入れて準備していたお菓子を確認し、休憩室に入る。
明かりをつける時間も惜しい。
私は急いで栄子さんのロッカーの前までいく。
「えっとぜろ……よん……さん……あ、ずれた」
ロッカーはダイヤル式の鍵がつけられている。暗い上に、焦っているからなかなか揃えられない。
「よし、そろっ……」
「たく……だれだよ。電気消したやつ。喫煙所まで消すなよな」
(え!)
私はロッカーを開ける寸前で、とっさにロッカーの物陰にかくれた。
(部長!)
危なかった。まさか休憩室の奥の喫煙所にいるなんて。
そもそも、人を呼んでおいて、タバコをすっているとはどういうつもりなのだろうか。普段、すぐ来いとか言うくせにと文句言ってやりたいが……だが、今はいい。
電気を消しておいてよかった。暗くて私のことは気づいていないみたいだった。それを証明するかのように、部長はすぐに休憩室を出ていった。
私は一息ついて、再び栄子さんのロッカーを開けて、お菓子を入れ、そしてすぐに休憩室をでた。こっそりと。

また後日。
私のロッカーの中には、お菓子がまた一つはいっていた。



SS 例の物




「お客さん……あんたの熱意に負けたよ。
仕方ない300万で売るよ」
「あ、ありがとうでげす!
恩に着るでげす!」
「……お客さん、いいかげんその『でげす』やめない?
そのルックスでその語尾は似合ってないよ?」
「……これで素でげすよ?」
「まじかよ。
まぁいいや。はい、例のもの。
ほんとに大事にしてくれよ!
こんな格安で手に入るなんて、うち以外にないからね!
それと、今回だけだからね!」
「ぐふふ、肝に命じておくでげす!
ありがとうでげす!」
私はやっと手に入れた。
これを手に入れるために私はどんなに苦労したか。
300万なんて安いもんだ。
最低価格800万で売られている品物だからな。
これで当分は生きて行ける。

私は精一杯のお辞儀をし、店をでた。
出るときに見えた店員の顔の苦笑いがちらっと見えた。
私は店をでて精一杯、深呼吸をした。心を落ち着かせるためだ。でないと嬉しさのあまり、でかい声で叫んでしまいそうになる。
私は300万で購入したものを、改めて袋から取り出し見つめた。
ゴクリとツバを飲み込む。よくアニメとかで『ゴクリ』と擬音が使われるが、本当に緊張状態で飲み込んだツバは『ゴクリ』と音がすると初めて実感した。
「……ぐふ、ぐふふふふふ」
自然に笑いがこみ上げてくる。抑えようにも抑えられない。
私はそれほどのものを手に入れたのだ。

「あれ、吉田くん?」
「にょわーーーーー!」
不意に声がかかり、肩が、目が、肺が、心臓が同時に跳ねあがった。だが、驚いて例の物を落とすなんてそんなヘマはしない。そんなことをするのはアニメのヘタレ主人公か、ドジっ子か、ただの馬鹿だ。
「だ、大丈夫?」
「は、早川氏……お、驚かさないでほしいでげす」
「え……っとわたし、別に驚かしたつもりは……ごめんね」
「うむ、いいでげす。こいつが無事だったので……」
「ん? なーにそれ?」
早川氏はちょっと首を傾けて、私の手にもつ物に視線を移す。その仕草、とってもかわいいでげす。
「拙者……ついに、例のものを手に入れたでげす」
「れいのもの? まさか! ほんとに!
すごーーい! え! ほんとに!
いくら! ねーいくらで手に入れたの!」
早川氏は目玉が飛び出るくらい見開いている。
「聞きたいでげすか?
聞きたいでげすか?」
「うん! 聞きたいでげす!
ねー、もったいぶらないで教えてよー!
私と吉田くんの仲じゃない!」
確かに早川氏とは大学で出会ってからの付き合いになるので、もう8年くらいになる。まさか自分がこんなかわいい子とこうして友達になるなんて、高校のころの自分が見たら歓喜で裸で歌いだすだろう。だが……。
「さすがに、ただでは教えられないでげす。
苦労したでげすからなぁ」
「わかった!
じゃー3分間、私のおっぱい自由にする権利をあげる!
それならいいでしょ!」
「にょはああああ!」
な、何を言い出すんだこの子!
「にょ、な、なにをいって!」
「えー、だって吉田くん。わたしと会うときは1時間に平均89回私の胸……みてるよね?」
「にゅおおおおお!」
確かに彼女と会うとつい目が胸にいってしまう。
だが仕方ないのだ。彼女はなぜか毎回、胸が強調される服ばかり着てくる。春だろうが、夏だろうが、秋だろうが、冬だろうが、胸元をあけ谷間を作ってくる。
そしてときには肩掛けバックを斜めに紐をかけ、『パイスラ』というものをやって更に胸を強調してくるときもある。
これで見ないほうがおかしい。
というか数えられてしまうほど、私はわかりやすく見ていたのか。
「平均89回も見てたってことは、いつか触りたいのかなぁって思って……。
……自分でいうのもなんだけど、結構柔らかくて気持ちいよ?」
「……び、ビッチでげす! そんなの、ビッチでげす!」
「えー! ひどい! こんなこというの吉田くんしかいないのに!」
「な、なんですと! ほ、ホントでげすか?」
「ホントだよー! 私達もう8年の付き合いになる親友でしょ!
親友以外でこんなこと言わないよ!」
「し、親友にもなんだかおかしいでげすが……」
だが、本当に触っていいのか。
大学でも、職場でも、彼女の事が好きな男はたくさんいた。てか、いる!
「さー、吉田くん!
私にその例の物の値段を教えて!
その代わり! 私のおっぱいを3分間、自由にしていいわ!」
早川氏は、上着の胸元を大きくあけ、豊満な胸を突き出す。
……でかい。
私は再び、ゴクリとツバを飲んだ。さっきの音より2段階くらい大きい着がする。
「だ、だめでげす!
これは、これはだめでげす!」
「えええええ!
女に恥をかかせるの!」
「は、早川氏!
この価値を本当に知っているのなら!
こんなものではないでげす!!」
そう、たとえどんな素晴らしいおっぱいであってソレを自由にできたとしても、この例の物とでは割りわない。せいぜい、例の物の袋から匂いを嗅ぐ程度だ。
そのことを早川氏が知らないわけがない。わからないわけがない。
長年連れ添った友として。
「……ふ、さすがだね。吉田くん。
さすが私の親友。
ごめんね、騙すつもりじゃなかったんだ。
吉田君が例の物の価値がわかる人かどうか、試したくてね。
もし、間違った価値の見方していたら、無理矢理でも私のものにしようとしてたから」
「……やはり、自分をためしていたでげすか」
「ふふ、ごめんね。
でもなぁ……やっぱり知りたいしなぁ、値段」
「こればかりは、早川氏でも無理でげす。
そうでげすな……これからの人生、拙者に差し出すっていうのであれば、値段どころか例の物を見て触って、抱きしめてもいいでげすがね。
なーんて冗談でげ……」
「え……ほんと?」
「え?」
「そ、そんな……ま、まさか吉田君からプロポーズを言ってくれるなんて……」
「え?」
「え、っとうん。そっか……うん。そうだよね、うん。
わ、わたしの人生……あなたにあげる。だから、あなたの側にいさせて……」
「え?」
「お願い……します」
「…………」
彼女が深々と頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
私も深々と頭をさげた。