冬の楽園 〜炬燵と雪見だいふく〜



 

冬に楽園があるとすれば、ソレは家の中に現れるだろう。

楽園の名は『炬燵』。

入ったが最後、炬燵からでることは容易ではない。

外の凍るような寒さで身体が冷やされ、家に帰ると炬燵の精霊が、

「早くおいでよ〜」と手招きしているのが見えるのだ。

たいていの冒険者はこの誘いに乗ってしまう。乗ってしまって、足先から身体の芯までじんわり、ゆっくりと暖められる。

それがなんともきもちいことか。

いかなる地獄の苦行に耐える修行僧も、この炬燵の前には手も足もでない。瞬く間に修行をやめ、炬燵の住人になる。

それはそうだ、なんたって炬燵は地獄ではない、楽園なのだ。

苦しみに耐えれるものほど、楽園で受ける恩恵は大きい。

なんたって楽園なのだから。

だが中には楽園を恩恵を受けても、気を確かにもつ強者も中には存在する。

強者は程よく身体を癒やし、再び旅にで、また疲れを癒やしに炬燵へやってくる。

このようなことができるものはそうそういやしない。

ところがどっこい。

炬燵の精霊はそんな強者も、炬燵の住人にとなり、長く滞在してほしいと思っている。

だから、精霊はあれやこの手を使って強者を引き止める。

とくに定番がみかんだ!

こいつは疲れたときにはもってこいの品物だ。

なんたってあの甘酸っぱさが心だけじゃなく、身体の疲れを癒やすんだから、これのコンボは凄まじい威力を発揮する。

そして、炬燵のなかで食うみかんが美味いのなんのって!

どういうわけが炬燵に入ったときと、入っていないときで食べると味が全然違うんだから、驚きだ!

……なに? みかんを食べても耐え抜くヤツもいるって?

おいおい、そいつはどんな化物だよ。

そんなやつがこの世界にいたってのかい!

はは、さすがに炬燵の精霊も諦め……

 

おい、ちょっとまて……まさかあんなものをだそうってのか?

なんてこった精霊のやつ、『雪見だいふく』なんて出しやがった!

え? 冬にアイスはないだろうって?

ばっきゃろー!

おめーは食べたことがないから、そんなことがいえんだよ!

いいか!

身体の芯がじんわりと暖かくなっているところに、もちもちで冷たい雪見だいふくが身体の中に入ってみろ!

もう、なんていうか!

とにかくすげーぞ!

 

ああああ、ほら、さすがの強者も、これじゃぬけだせねーや。

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